マサキの実験室

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架空・刑事ドラマ 特命最前線のちょとした解説

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まぁ、お気づきの方は分かると思いますが「特命最前線」という番組名と、サブタイトルのなんとなくの傾向・・・。そうです、あの名作刑事ドラマ「特捜最前線」のパロディ(パクリ)です。ちなみに、「特命最前線」のタイトルバックが夜の月なのは、「特捜」のタイトルバックが夕焼けの太陽であり、それのパクりにすぎないと意味です。

これは「特捜」でありそうなワードを使った、私の遊びでありました。しかし、こんな遊びに夢中になってしまうのが私なので、全510話のサブタイトルを作ってしまいました(「特捜」は全508話+SP)。ですが所々、遊びも入れて「Gメン'75」っぽいサブタイトルも混ぜたり、刑事達のキャラクターや大まかなストーリーを考えていたりと、非常に楽しくやってました笑

なんとなくの番組の歴史

「特命最前線」・・・警視庁特別捜査課(通称・特捜課)の活躍を描く。

番組初期(第1〜100話まで)の所属メンバー

・志賀警視正(キャップ)

・藤波警部

・篠原警部補

・若松刑事

・竜田刑事

・東刑事(紅一点)

100話までを一応、初期として定義すると初期の主役的存在は特捜課若手エースの若松である。特捜課のキャップは志賀警視正で、陣頭指揮を取るのは志賀に次ぐベテランの藤波、そしてエリートでキャリアのある篠原が実質No3ポジションとなっている。このトップ3が最後まで特捜課を支え続ける。また初期において、若松の後輩だった竜田も最後まで在籍。竜田に至ってはあまりポジションが変わることはなかったが、特捜課では最も親しみやすいキャラクターとなった(この番組は存在いたしません)。

若松は特捜課のトップ3の一個下のポジションで、後輩の竜田と新米で一番下の後輩・東という並びで言えば、特捜課の真ん中のポジションにあたる。つまり、若松が特捜課のエースかつ主役的存在なのは必然と言える。

番組初期は若松が主役であったが、もう一人の主役(裏の?)はなんと言っても新米かつ特捜課・紅一点の東である。若松がエースとして特捜課で活躍するなか、新米の東は刑事としての未熟さや、優しさや故に刑事という職務への葛藤などが描かれる。基本的にその他のメンバーは経験豊富なエリートの集まりであるため、ある意味、番組初期は東刑事の成長譚的側面もあった(さも存在するかのように偉そうに書いてますが、この番組は存在いたしません)。また、数多くの災難に巻き込まれる点では、まさに悲劇のヒロインであった。

そして、第100話にて特捜課のエース若松は退職し、特捜課を去った。その穴を埋めるためにやってきたのが平屋である。平屋のキャリアは若松に匹敵するが、番組の主役というよりも、特捜課の有能なメンバーのひとりという立ち位置で、オールラウンダーの役割を担った。そのため、扱う事件、巻き込まれる事件のバリエーションはメンバーの中で最も豊富である。若松なき「特命最前線」を平屋が地味ながらも支えていった。

その間、東は新米刑事から徐々に成長していったが、第149話で実の父親を逮捕し、第150話で辞職を決意。特捜課を去る際、東は「犯罪者はいつも、心に傷を抱えている。それを逮捕するのが刑事であるが、その役目を全うすることは私にはできなかった。だから、今後の人生は人の心の傷を癒す道を見つけていきたい。」という言葉を残していった。

第151話にて、東の代わりに配属されたのが女刑事の二階堂。そもそも二階堂は東よりも、刑事としてのキャリアは長い。東のテーマは"成長"であったが、二階堂は"執念"が描かれた。ある事件の復讐を果たすために、二階堂はその犯人を独自に追う。第200話でついにその犯人を自らの手で逮捕し、復讐を果たす。それ以降は特捜課に所属しながらも、完全にはその色に染まらないという独自のポジション築いていく。

第180話にて、特捜課は所轄と合同捜査をした際、その所轄で冷や飯を食わされている戸川(通称・冷や飯食い刑事)と、活気盛んで煙たがられている若手刑事の北条と出会い、その二人を特捜課を所属させる。基本的に戸川と北条はコンビで活躍し、活気盛んな北条のお守りをするの戸川の役目である。また、北条はおじいちゃん子で、第353話にて祖父の康太郎が準レギュラーとして登場。戸川は老刑事として、番組になくてはならないポジションを築き、北条は東ほどではないが成長する姿が描かれ、番組終盤では一人前の刑事になっていく。

それ以降、全くメンバーが変わらない特捜課であったが、第402話にて、所轄の雪女刑事と呼ばれる村井が登場。当初は特捜課に対抗意識を燃やしていたが、捜査が進むにつれて協力していくようになる。村井は特捜課に所属した訳ではないが、その後も準レギュラーとして登場し、定期的に雪女刑事シリーズが展開されていく。村井は特捜課と所轄のパイプの役割であり、正式なメンバーではないが、仲間という存在は番組の多様性を象徴する存在であった。そして、最終エピソードの特捜課存続の危機の際には自ら志願して特捜課の捜査に加わり、特捜課の仲間として番組のラストを迎えた。

また、第405話で準レギュラーの女弁護士・冴木が登場。そして、竜田と刑事とのロマンスが展開されていく。

最終エピソードは、特捜課のキャップ・志賀の因縁が描かれる。特捜課発足からついに10年経過し、第1話で逮捕した犯人がついに出所する。それと時を同じくして、過去に特捜課のキャップの座を争った志賀と同期の男が警視庁を辞める。その同期の男は優秀な人物であったが、手段を選ばない部分があり、そのために特捜課のキャップにはなれなかったのだ。そのことで志賀を10年間恨み続けており、出所した男を唆して志賀警視正を誘拐、さらには特捜課の存在意義を揺らがせようとしていたのだ。

そう、最終エピソードは10年の歴史を意識したストーリーとなった。そして、「特命最前線」10年の歴史がやがて、「やさぐれ刑事温情家」に繋がっていくことになる・・・。

架空・刑事ドラマ 特命最前線サブタイトル集5 第401〜510話(全510話)

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400回を超え、ここからの「特命最前線」はラストに向かって突き進んでいく。新たな試みとして、準レギュラー・雪女刑事こと村井梓刑事、女弁護士・冴木凉子が登場。村井刑事は所轄と特別捜査課を繋ぐパイプの役割で、弁護士の冴木は竜田刑事と事件に巻き込まれたことにより、特捜課と接点が生まれ、何かと関わっていくことになる。新たな試みはメンバーだけにとどまらず、内容も徐々にエモい方向に変化し、タイトルも長くなっていく。そして、メンバーの過去・因縁などのストーリーに決着がつき、「特命最前線」は盛大なラストを迎える。

 

第401話「スナイパー入国・特捜大パトロール!」篠原

第402話「雪女と呼ばれた女刑事!」村井(準レギュラー)・特捜課-村井刑事登場・雪女刑事シリーズ-

第403話「老人会殺人事件!」北条・北条康太郎

第404話「遙かなる赤い疑惑!」二階堂

第405話「竜田刑事と女弁護士の逃亡!」竜田・冴木(準レギュラー)-弁護士・冴木凉子登場-

第406話「亡き妻に贈る連続殺人!」平屋

第407話「消えた特殊爆弾!」特捜課・村井

第408話「壊れた絆・家庭崩壊ゲーム!」藤波

第409話「卒業アルバム・東京駅回想電車!」二階堂

第410話「早朝ランナー・河川敷の殺人風景!」北条

第411話「対決・冷や飯食い刑事と元囚人!」戸川

第412話「強盗殺人・悲しみのプレゼント!」篠原

第413話「憎悪・芸能人連続襲撃事件!」平屋

第414話「逃亡犯・愛と現実のコントラスト!」戸川

第415話「5億円強奪事件・犯人グループの顛末!」篠原

第416話「不倫・ある男の証言!」竜田

第417話「命の蝋燭・天使が還るまで!」藤波

第418話「女弁護士の執念!」冴木・竜田

第419話「女刑事と雪女刑事!」二階堂・村井-雪女刑事シリーズ-

第420話「集団リンチ・少年達の渇き!」戸川・北条

第421話「大臣のスキャンダルを握る女!」篠原

第422話「サラリーマン・崩壊へのユートピア!」平屋

第423話「拳銃乱射・東京駅大捜査!」特捜課

第424話「欲望の街・死の香りのホステス!」北条

第425話「籠城・逃亡者の慟哭!」竜田

第426話「背水の男女・灰色の逃避行!」二階堂

第427話「刑事殺し・疑惑の前科者!」戸川

第428話「追跡・明日への50キロメートル!」竜田

第429話「遺書・ある少年の死の真相!」不倫

第430話「セピアの隅田川・青春時代を流す女!」平屋

第431話「真っ赤な復讐・狙われた結婚詐欺師!」竜田・平屋

第432話「町内会・笑顔に潜む殺意!」戸川

第433話「横領・制服を脱いだ銀行員!」篠原

第434話「空の青さのフォトグラフ!」二階堂

第435話「受験戦争・ある少年の犯罪!」北条

第436話「女の悲鳴・存在しない被害者!」平屋

第437話「新宿・犯罪告発ビラを巻く男!」藤波

第438話「誘拐犯と少年・本当の両親を探す旅!」竜田

第439話「雪女刑事・マンションに張り込む!」村井-雪女刑事シリーズ-

第440話「羽田で逢った女・疑惑の二日間!」平屋

第441話「家庭内格差・憎き妻に送る毒入りケーキ!」戸川

第442話「死んだ男のフォークソング!」志賀

第443話「指名手配・ガラス細工に込めた愛!」竜田

第444話「失意の女・復讐のワインレッド!」北条

第445話「改造拳銃・若気の至りの代償!」二階堂

第446話「転落のアイドル・犯罪カムバック!」竜田

第447話「大都会・ラッシュアワー殺人事件!」平屋

第448話「戻らぬ日々・新築マンション連続放火事件!」戸川

第449話「ルージュの女・東京駅ノスタルジア!」篠原

第450話「法廷・女弁護士と魔性の女!」冴木・竜田

第451話「雪女刑事と女の犯罪心理学者!」村井-雪女刑事シリーズ-

第452話「白いスポーツカー・果てしなき暴走!」二階堂

第453話「ビルジャック・恐怖の8時間!」竜田

第454話「道路・幸せを祈る女の過去!」藤波

第455話「スキャンダル・ビデオテープ!」平屋

第456話「大都会の朝・工事現場の3000万円!」北条

第457話「血の怪文書・ある企業の犯罪疑惑!」平屋

第458話「壁の落書き・深夜の殺人掲示板!」戸川

第459話「妻を殺した夫・空白の1年間!」篠原

第460話「一人の夜・遠い日の子守唄!」二階堂

第461話「街路樹・背を向けたあの日!」竜田

第462話「不倫・父の亡霊に取り憑かれた女!」藤波

第463話「汚職事件・証拠品と消えた刑事!」戸川・北条

第464話「回想・女のトラック運転手の愛!」竜田

第465話「脳裏に刻まれた謎の女の声!」平屋

第466話「雪女刑事・揺れる想い!」村井-雪女刑事シリーズ-

第467話「想い出・クレヨンで描いた虹!」二階堂

第468話「夢を見た通り魔!」藤波

第469話「クラブ殺人・偽りのパーティタイム!」北条

第470話「窓際族・孤独のサボタージュ!」平屋

第471話「ネオンの宿・男と女の失楽園!」竜田

第472話「脱獄・死刑囚が残したポエム!」戸川

第473話「殺人リクエスト・ソング!」篠原

第474話「パステルカラー・犯罪リフレイン!」平屋

第745話「サラリーマン・哀愁のバースデイ!」二階堂

第476話「未成年カップル・あぶない反抗!」竜田

第477話「沈黙・カーテン越しの小さな目撃者!」二階堂

第478話「殺人容疑・息子に贈る進学祝い!」藤波

第479話「雪女刑事・キャバクラ潜入捜査!」村井-雪女刑事シリーズ-

第480話「刑事稼業34年の懺悔!」志賀

第481話「連続障害事件・育まれた狂気!」戸川

第482話「平屋刑事の執念!」平屋

第483話「コバルトブルー・憎しみの望郷!」篠原

第484話「歩道橋転落死・街灯は見ていた!」北条

第485話「ダムに沈んだ青春メモリー!」二階堂

第486話「失踪・明日なき男の愛!」藤波・篠原

第487話「悪魔の降りる瞬間!」北条・北条康太郎

第488話「法廷の外の女弁護士!」冴木・竜田

第489話「大都会の闇・無差別連続殺人事件!」平屋

第490話「出所殺人・元囚人の過去!」戸川

第491話「雪女刑事・花を手向ける!」村井-雪女刑事シリーズ-

第492話「夢破れた男・最後のホームラン!」竜田

第493話「ハチ公前・恋人を待ち続ける女!」二階堂

第494話「証言拒否・警視庁を弄ぶ男!」特捜課

第495話「嘆願書・黙秘する女!」平屋

第496話「復讐・拳銃を持ったサラリーマン!」竜田

第497話「コインランドリー・交差した十字架!」篠原

第498話「狙われたスーパー・予告電話の謎!」北条

第499話「挑戦I 連続爆破・声明なき犯行!」特捜課-500回記念作品-

第500話「挑戦II 日本の夜明け前!」特捜課-500回記念作品-

第501話「張り込み・公園にたたずむ女!」戸川・北条

第502話「ある男の転落!」志賀

第503話「学校爆破5秒前!」平屋

第504話「竜田刑事のラブストーリー!」竜田・冴木

第505話「退職間近の冷や飯食い刑事!」戸川・北条・北条康太郎

第506話「女刑事が送った紫のアネモネ!」二階堂

第507話「篠原刑事・友情の決算!」篠原

第508話「藤波刑事・過去とのピリオド!」

第509話「誘拐I 消えた志賀警視正!」特捜課・村井 ゲスト若松・東

最終回・第510話「誘拐II さようなら特別捜査課!」特捜課・村井 ゲスト若松・東

 

【ちょっとした解説】

架空・刑事ドラマ 特命最前線サブタイトル集4 第301〜400話(全510話)

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放送回数が300回を超え、メンバーチェンジもなく、「特命最前線」という番組がお茶の間にしっかりと根を下ろす。なので、ここからはメンバーのパーソナルやバックボーンがしっかりと描かれはじめる。また、400回記念として、かつて特捜課に所属していた若松、東がゲストとして登場。400回記念を番組の歴史を振り返りつつ、盛り上げた。

 

第301話「ダイナマイト・狙われた藤波刑事!」藤波-300回記念作品-

第302話「篠原刑事 命の特捜ヘリ!」篠原-300回記念作品-

第303話「連続殺人犯の妹!」竜田-300回記念作品・女シリーズ-

第304話「投書・刑事を憎んだ少女!」平屋-300回記念作品・女シリーズ-

第305話「プラットホームの悪女!」二階堂-300回記念作品・女シリーズ-

第306話「演歌を唄う、死を呼ぶ女!」戸川・北条-300回記念作品・女シリーズ-

第307話「十字架・愛をこめて!」篠原

第308話「死体・爪楊枝の謎!」北条

第309話「団地内不幸さがし!」戸川

第310話「心中・悲劇を買う女!」平屋

第311話「憎悪の密告電話!」志賀

第312話「追跡・覚醒剤闇ルート!」篠原

第313話「偽証・老刑事と容疑者!」竜田

第314話「面影・女刑事の愛した日々!」二階堂

第315話「警視庁を襲う爆弾犬!」竜田

第316話「結婚指輪の決断!」藤波

第317話「東京→カイロI 砂漠に消えた5億円!」特捜課

第318話「東京→カイロII 帰らざる男!」特捜課

第319話「午前12時18分の殺人ミステリー!」平屋

第320話「単身赴任・居場所なき男!」藤波

第321話「退職警官とホステス!」竜田

第322話「冷や飯食い刑事の残業!」戸川

第323話「真夜中の死の公衆トイレ!」平屋

第324話「疑惑・煙草を吸う女秘書!」二階堂

第325話「脱獄・追跡の48時間!」北条

第326話「オブジェと呼ばれた女!」篠原

第327話「強盗殺人・破られた便箋!」竜田

第328話「篠原刑事 傷害疑惑!」篠原

第329話「愛と死と未来!」戸川

第330話「ロックバンド殺人事件!」竜田

第331話「若者狩り・中年特攻隊!」藤波

第332話「殺人依頼 15歳の少女!」二階堂

第333話「平屋刑事宛・犯罪告発状!」平屋

第334話「痴漢をした北条刑事!」北条

第335話「藤波刑事と少女!」藤波

第336話「無実証明捜査!」平屋

第337話「竜田刑事 過去を追う!」竜田

第338話「潜入・女たちの檻!」二階堂

第339話「警官連続射殺事件!」竜田

第340話「恐喝・消さぬ過去が金を生む!」篠原

第341話「魔の市長選挙!」平屋

第342話「法律をまとった悪女!」竜田

第343話「通り魔が愛した歌!」戸川

第344話「沈黙の志賀警視正!」志賀

第345話「追跡・駅にあった逃亡日記!」竜田

第346話「無罪・・・!」平屋

第347話「詐欺組織・潜入の72時間!」藤波

第348話「女子大生幸せものさし!」二階堂

第349話「連続老人殺人事件!」北条

第350話「ダイナマイト・エアポート・パニック!」特捜課-350回記念作品-

第351話「機密文書流出事件!」篠原

第352話「少年・勇気の証言!」藤波・竜田

第353話「北条刑事 刺される!」北条・戸川-祖父・北条康太郎登場(準レギュラー)-

第354話「魔の芸能プロダクション!」平屋

第355話「復讐・愛した妻のネックレス!」藤波

第356話「逮捕・道路標識は見ていた!」平屋

第357話「対決・姉と弟!」竜田

第358話「ハイヒールの遺言!」二階堂

第359話「不良少女の償い!」藤波

第360話「母探し・青年憎しみの上京!」二階堂

第361話「交番通いの老人!」北条

第362話「ある日本人の哀愁!」戸川

第363話「殺人生放送!」篠原

第364話「元刑事・疑惑の密会!」平屋

第365話「復縁夫婦殺人事件!」藤波

第366話「忘れたはずの記憶!」竜田

第367話「誘拐犯の女子高生!」二階堂

第368話「週刊誌ライターの失踪!」平屋

第369話「追跡I 余命1ヶ月の死刑囚!」志賀

第370話「追跡II 真犯人の行方!」志賀

第371話「海に消えたサラリーマン!」戸川

第372話「ワンナイトラブ殺人事件!」竜田

第373話「黙秘・ある妻のアリバイ!」平屋

第374話「推理作家・殺人プロット!」藤波

第375話「母・愛の歌!」北条

第376話「魔の改造ライフル!」篠原

第377話「狙われた女子大生!」二階堂

第378話「病気・謎の連続死!」北条

第379話「高校生・理由なき犯行!」藤波

第380話「保険金・疑惑の死!」平屋

第381話「団地・覗きの眼(まなこ)!」二階堂

第382話「野球場のミステリー!」竜田

第384話「住宅街・私刑執行団!」篠原

第385話「ある男の盗難品!」竜田

第386話「推理・消えた凶器!」藤波

第387話「すれ違う若者たち!」二階堂・竜田

第388話「暗闇からの骸骨の叫び!」平屋

第389話「目撃者狩り・予告された復讐!」篠原

第390話「命の値段!」志賀

第391話「殺意を呼ぶラブレター!」二階堂

第392話「留置所潜入・犯罪紳士の謎!」藤波

第393話「お母さんの泣き声!」竜田

第394話「証言・空き家の灯の謎!」戸川

第395話「パトカー・疑惑の3分間!」北条

第396話「出世殺人レース!」平屋

第397話「面影・藤波警部の哀!」藤波

第398話「ある妻の殺意!」志賀

第399話「退職刑事の証言!」若松・竜田-400回記念作品-

第400話「特捜課にいた元女刑事!」東・二階堂-400回記念作品-

 

架空・刑事ドラマ 特命最前線サブタイトル集3 第201〜300話(全510話)

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第201〜300話は「特命最前線」の安定期に入り、よりストーリー重視で勝負していこうという制作サイドの意気込みを伺うことができる(実際は存在しないけど)。

 

第201話「蒸発・残された夫!」藤波

第202話「荒川殺人模様!」平屋

第203話「ダイナマイト盗難事件!」竜田・北条

第204話「冷や飯食い刑事の殺人容疑!」戸川

第205話「団地内殺人競争!」竜田

第206話「ラブホテル放火事件!」篠原

第207話「父と子の悲しみ!」藤波・北条

第208話「無実を叫んだ死刑囚!」平屋

第209話「二人の女の慕情!」二階堂

第210話「志賀警視正を憎んだ男!」志賀

第211話「消えた特命ヘリ!」平屋

第212話「冤罪・ビラを巻く男!」藤波

第213話「冷や飯食い刑事と空き巣犯!」戸川・北条

第214話「拳銃強盗・狙われた逃亡犯!」竜田

第215話「スーパーに立て篭もった男!」二階堂

第216話「篠原刑事 スリ師を追う!」篠原

第217話「青春・あるアイドルの忘れた過去!」北条

218話「夜の街の怨念!」平屋

第219話「対決・留置場の男!」藤波

第220話「パートの女!」篠原-女シリーズ-

第221話「ロックを唄う女!」戸川-女シリーズ-

第222話「赤いルージュの女!」志賀-女シリーズ-

第223話「竜田刑事 撃たれる!」竜田

第224話「交番爆破事件!」平屋

第225話「殺人スクープ!」藤波

226話「黙秘する女未決囚!」二階堂

第227話「天使を乗せたメリーゴーランド!」篠原

第228話「狂言・警視庁を欺いた男!」藤波

第229話「魔の同窓会!」北条

第230話「高層ビル・偽装殺人!」竜田

第231話「愛を信じた女の歌!」戸川

第232話「法廷・氷の弁護団!」志賀

第233話「道路・ある事件の花束!」藤波

第234話「真夜中の殺人ミステリー!」篠原

第235話「いつか会ったコールゴール!」平屋

第236話「思い出行き電車!」二階堂

第237話「街の片隅で・・・」竜田

第238話「通り魔の花瓶!」戸川・北条

第239話「挑戦・午前0時の完全犯罪!」平屋

第240話「藁人形と妻!」平屋

第241話「ヘッドライトの証明!」篠原

第242話「アタッシュケースの生首!」二階堂

第243話「名前を捨てた若者たち!」藤波

第244話「ある刑事の犯罪記録!」篠原

第245話「証言を拒んだ学生!」北条

第246話「パトカー連続爆破!」竜田

第247話「潜入・魔の経営塾!」藤波

第248話「殺意の注射器!」戸川

第249話「推理・雪山遭難事件!」平屋

第250話「女刑事と女詐欺師!」二階堂-250回記念作品-

第251話「代議士のアリバイ!」志賀-250回記念作品-

第252話「東京駅・天使の選択!」竜田

第253話「交番巡査殺人事件!」篠原

第254話「護送車襲撃・消えたテロリスト!」平屋

第255話「女刑事・スナックを張り込む!」二階堂

第256話「愛の逮捕状!」藤波

第257話「黙秘・冷や飯食い刑事と老スリ師!」戸川・北条

第258話「疑惑・口紅をした社長!」二階堂

第259話「殺し屋入国!」篠原・藤波

第260話「山道転落事故のトリック!」平屋

第261話「改造モデルガン・死の乱舞!」竜田

第262話「署長恐喝事件!」平屋

第263話「恐怖の予告殺人魔!」竜田

第264話「10時53分 特捜ヘリ不時着!」篠原

第265話「子連れ逃亡犯!」藤波・北条

第266話「竜田刑事と愛人!」竜田・二階堂

第267話「1億円と消えた銀行員!」平屋

第268話「冷や飯食い刑事を訪ねた女!」戸川

第269話「新郎を殺した謎の女!」平屋

第270話「時効寸前に死んだ男!」二階堂

第271話「殺人パニック・イン・トーキョー!」特捜課

第272話「少年と消えた爆弾!」戸川・北条

第273話「潜入・覚醒剤ルート!」藤波

第274話「東京→沖縄縦断捜査!」志賀

第275話「東京→沖縄 宵闇の望郷!」志賀

第276話「殺人犯平屋刑事!」平屋

第277話「列車ジャック・目的地は執着駅!」竜田

第278話「女刑事のストーカー!」二階堂-恐怖シリーズ-

第279話「特捜に送られた市松人形!」平屋-恐怖シリーズ-

第280話「殺人犯の亡霊!」戸川-恐怖シリーズ-

第281話「落ちた手首の主!」北条-恐怖シリーズ-

第282話「裁判官殺人事件!」篠原

第283話「毒入り牛乳宅配事件!」藤波

第284話「新宿に消えた拳銃!」平屋

第285話「命を弄ぶ夫婦!」竜田

第286話「事件現場を模写した女!」藤波

第287話「復讐・愛に飢えた女の子たち!」竜田

第288話「幸せを祈った女刑事!」二階堂

第289話「殺人ライブハウス!」戸川・北条

第290話「悪意の病室!」篠原

第291話「ナンパ連続殺人事件!」平屋

第292話「挑戦・笑わない男!」藤波

第293話「疑惑・窃盗常習犯!」戸川

第294話「遺書のない自殺!」戸川

第295話「ミッドナイトコールの謎!」平屋

第296話「警視庁幹部の犯罪!」志賀

第297話「魔のウェイトレス!」二階堂

第298話「慕情・消えたホステス!」北条

第299話「追跡I 特捜課恐怖の48時間!」特捜課-300回記念作品-

第300話「追跡II 怒りの刑事たち!」特捜課-300回記念作品-

 

【ちょっとした解説】

架空・刑事ドラマ 特命最前線サブタイトル集2 第101〜200話(全510話)

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第101〜200話は「特命最前線」の初のメンバーチェンジ、増員が起こる転換期となります。第101話にて、退職した若松刑事に代わり、平屋刑事が加入。第150話では東刑事が退職し、その代わりに、第151話にて二階堂刑事が加入。また、第180話では、老刑事=冷や飯食い刑事の戸川刑事と若手刑事の北条刑事が加入。ここから6人体制から、8人体制となり、それ以降、「特命最前線」のメンバーが固定される。

 

第101話「米軍資金強奪事件!」平屋-平屋刑事登場-

第102話「憎悪・息子に向けた刃!」平屋

第103話「白い粉・欲望の港町!」篠原・竜田

第104話「張り込み・205号室の女!」藤波

第105話「志賀警視正 愛の捜査!」志賀

第106話「特捜課犯罪日誌!」特捜課

第107話「爆破・無実の証明!」東

第108話「あるOLの疑惑!」平屋

第109話「中野ラブストーリー!」竜田

第110話「タバコを吸う少年!」東

第111話「頸動脈を切る通り魔!」竜田

第112話「追跡・消えた不発弾!」篠原

第113話「黙秘・愛を捨てた女!」藤波

第114話「ある代議士の犯罪記録!」平屋

第115話「女たちのプライド!」篠原

第116話「高層ビル殺人トリック!」平屋

第117話「残されたジョーカーの謎!」竜田・藤波

第118話「欲望の街の天使!」東

第119話「パスポートを握った死体!」篠原

第120話「張り込み・本屋の女!」平屋

第121話「殺人医師・恐怖のメス!」東・竜田

第122話「証言を拒む男!」藤波

第123話「朝日が昇る殺人風景!」篠原 

第124話「汚れた街・天誅を下す男!」平屋

第125話「高層ビル・1万円札の神!」竜田 

第126話「殺人スタジアム!」東    

第127話「テレビタレントスキャンダル!」篠原

第128話「終着駅にあった死体!」藤波     

第129話「六人の刑事I 愛のために!」特捜課

第130話「六人の刑事II 手錠の重み!」特捜課

第131話「墓石倒し・10年の憎悪!」平屋    

第132話「中野ラブストーリー!」竜田

第133話「白い粉の警察官!」志賀   

第134話「海岸・奪われた5億円!」藤波・平屋

第135話「蒸発・死体を愛した女!」篠原   

第136話「ネオンが拳銃を彩る!」東     

第137話「殉職刑事・疑惑の10分間!」竜田    

第138話「消えた東刑事!」東

第139話「殺人音楽家!」藤波

第140話「タイムリミット・命の血液!」平屋  

第141話「スナイパー・標的を割り出せ!」特捜課  

第142話「骸骨を描く少女!」東

第143話「警視庁犯罪派出所!」篠原・竜田

第144話「死んだ男の万年筆!」藤波

第145話「篠原刑事殺人予告!」篠原

第146話「交差点・信号は見ていた!」竜田

第147話「殺意なき銃口!」平屋

第148話「高層ビル連続殺人事件!」志賀

第149話「殺人犯・あなたは私の父・・・!」東

第150話「東刑事涙の退職!」東-150回記念作品-

第151話「復讐の女刑事!」二階堂-二階堂刑事登場-

第152話「殺人鬼の花束!」二階堂

第153話「特捜ヘリ大捜査!」篠原・平屋

第154話「ニセ巡査・殺人巡回!」藤波

第155話「面影I 死んだ女と新宿のホステス!」篠原

第156話「面影II 墓標に込めた愛!」篠原

第157話「当たり馬券を持った死体!」竜田

第158話「悲劇・翼なき男たち!」二階堂

第159話「冤罪・私はやっていない!」志賀

第160話「亡霊を見た平屋刑事!」平屋

第161話「深夜・密告電話の女!」藤波

第162話「ライフル・復讐のターゲット!」二階堂

第163話「殺人パトカー、西へ!」特捜課

第164話「悪魔のプレゼント!」志賀・藤波

第165話「警官殺し・悪魔の銃声!」篠原

第166話「父と娘の憎しみ!」篠原・竜田

第167話「日本刀を持った銀行ギャング!」藤波

第168話「白骨死体が語る事実!」竜田

第169話「マイナスドライバーの通り魔!」平屋

第170話「竜田刑事と未決囚!」竜田

第171話「警視庁ブラックリスト!」二階堂・藤波

第172話「犯罪方程式!」篠原

第173話「疑惑I 権力者の息子!」二階堂

第174話「疑惑II 東京駅爆破!」二階堂

第175話「静かなる執念・喫茶店の男!」藤波

第176話「指令ゲーム・恐怖の交通網!」竜田

第177話「流行と死の街 六本木!」平屋

第178話「黒い霧・顔を潰された死体!」二階堂

第179話「張り込み・ベンチの悪徳刑事!」平屋

第180話「冷や飯食い刑事(けいじ)と若手刑事(デカ)!」戸川・北条-戸川(冷や飯食い刑事)・北条(若手刑事)-

第181話「冷や飯食い刑事 結婚詐欺師を追う!」戸川・北条

第182話「迷宮・京都連続殺人事件!」竜田

第183話「死体の皮を剥いだ女!」篠原

第184話「料理を食べた野獣!」藤波

第185話「コンクリートの手!」平屋-恐怖シリーズ-

第186話「不倫・妻は見ている・・・!」二階堂-恐怖シリーズ-

第187話「監禁・魔の実験室!」竜田-恐怖シリーズ-

第188話「冷や飯食い刑事と賽銭泥棒!」戸川

第189話「帰ってきたテロリストたち!」篠原

第190話「麻薬を持った藤波刑事!」藤波

第191話「母と娘の十字架!」平屋

第192話「道路で泣いた若手刑事!」北条

第193話「真夜中の指名手配犯!」竜田

第194話「大都会殺人25時!」二階堂

第195話「貨物列車爆破計画!」志賀・篠原

第196話「誘拐・愛に飢えた男!」平屋

第197話「宝石強盗と疑惑の夫婦!」平屋

第198話「自爆志願!」戸川

第199話「白バイに乗った狙撃者!」篠原

第200話「仇・・・!」二階堂-200回記念作品-

 

【ちょっとした解説】

小説「やさぐれた青春不発弾!」その4(最終回)村井さんが好きだと叫びたい

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村井さんが好きだと叫びたい

朝、おかあさんに元気よく、「行ってきます!!」と言って家を出たものの、いざ、学校に着いてみると、気分が浮かなかった。

それを察したのか、隣の堀川が村井さんの顎で差して、「お前、このままでいいのかよ。」と言ってきた。

「えっ?」

「いや、ほんとにこのままでいいのかって言ってんだよ。」

「だって、もうどうしょうもない・・・。」

「分かった。放課後、ここに残れ。話を聞かせろ・・・。」

「お、おい、ちょっと、いきなりそんなことを・・・。」

「なんでもないいから、とにかく残れよ。」

堀川に強引に決めてしまった。ガタイが良いので言葉にも圧がある。恭介はそれに抗うことができなかった。そんな堀川は気だるそうに、机に顔を伏せていた。

放課後、恭介は堀川の言われる前に教室で待っていた。その堀川も机に顔を伏せて待っていた。

恭介はこの教室に自分たち以外の誰かが残らないかと、心配して辺りを見回していたが、ものの見事に誰れも残らなかった。そして、村井さんは小川と北見のグループに混じって、教室を出ていった。

堀川はいよいよかとばかりにあくびをしながら顔を上げた。まるで、猛獣を覚ましたようである。

「おい、行っちまったぞ・・・、アイツ等と・・・。」

「ああ、知ってるよ。見てた・・・。」

「いいのか、これで・・・?」

「いいって・・・。その前になぜ、俺のことを気にかける?その理由を教えくれ。」

「理由・・・?」

「ああ、教えてくれ。」

堀川は「フッ・・・。」と笑った。

「俺はお前の隣の席だ。お前のことは毎日、見ている。おっと深い意味はねぇ。勘違いするなよ。」

「ああ、分かってるよ。」

「そんなお前がある日、村井と接するようになって変わった。今まで暗かったにな。まぁ、今のお前は決して明るくはないぞ。ただ、昔よりはマシってことさ。それはどう考えても、恋しかねぇ。そして、お前が変わったら、今度は村井が明るくなった。」

「・・・・・・。」

「なんか、興味が出てよ。今までの俺は色恋沙汰なんて興味なかった。でも、隣の暗い奴が恋によって変わってやがる。そんなん見せられたら、不思議と興味が湧いたんだ。」

そう言った堀川の表情がとても朗らかだった。

「それなのに、せっかくお前の目が活きいきしてきたと思ったら、また死にやがった。お前、目が死んでんだよ、恋してねぇとよ。」

目が死んでる・・・?

「まぁ、お前と村井の間に何があったからわからねぇ。これは二人のことだから、深くは聞かん。でも、本当にこのまま終わっていいのか?」

「俺は村井さんを傷つけた・・・。それに・・・、俺は村井さんに相応しい人間じゃない。だったら、このまま・・・、」

「何カッコつけてんだよ。お前はアクセルとブレーキを同時に踏んでるから、進まねぇんだよ。お前の本当の気持ちはどうなんだ?それが1番、大事なんだよ。訳のわかんねぇ、クソみてぇなプライドなんて捨てて謝ってこい。いいか、こういう時は謝れるか、謝らないかで今後が決まるもんだ。ではもう一回、聞くぞ。お前の気持ちはどうなんだ?村井が好きなのか?」

堀川はガンガン核心をついてくる。しかも、その言葉はヘビー級である。そんな堀川を前に恭介は一度、背を向けた本心を明かすしかなかった。

「俺は・・・、俺は、村井さんが好きだ・・・。」

「それでいい。明日、村井に謝ってこい。」

「分かった・・・。」

「まぁ、お前は気づいてねぇだろうがな。たまにな、村井はアイツ等と話してる時、お前のこと見てるぞ。」

「えっ・・・。」

「可能性があるなら、その可能性を自分で殺すな。」

堀川の言葉が、恭介の心に火をつけた。

「もしかして、勇気がないってか?ここは勇気で踏み出そう〜、この熱い想いを受け止めてほしい〜♪だろ。」

堀川は急におどけだした。

「それは某バスケアニメの主題歌か?」

「なんでもいい、明日、ちゃんとゴール決めろよ。」

「ああ、見とけ・・・。」

恭介はそう言い残して、急いで家に帰った。

 

「あら、おかえり。」

「いや、ちょっと頼みがある!!」

「えっ、何?」

「散髪代が欲しい!!どうしても、今日がいいんだ!!」

「何そんな熱くなってるの?心配しないで、ちょっと待って・・・。」

おかあさんはバックから、財布を取り出し、5千円を渡してきた。

「お釣りは返すよ。」

「いいの、取っとといて。」

「ありがとう!!」

情熱は人を行動的にさせる。しかも、それは今までの自分が知らない自分に出会うこでもある。そして、恭介は行きつけの床屋に向かった。幸い、恭介の情熱を感じ取ってか、誰も待ってはいなかった。

主人に案内され、椅子に座る。

「今日はどれくらいにしましょうか?」

「もう、思いっきりバッサリで!!」

恭介な鏡に写った自分を力強く見つめた。

 

髪を切り終えた恭介は急いで家に戻り、ジャージに着替えた。そして、家の近くのマラソンコースとなっている運動公園に向かった。そう、とにかく走りたかったのだ。この溢れ出る情熱を前に、何もせずにはいられない!!

夕方なので、走っている人がちらほらいる。みんな慣れているのか、安定した走りである。正直、走り慣れていないのに、その中に混じって走るのは気が引けるが、でもとりあえず走る!!

恭介はなんとなくの準備体操をして、走り出した。コースはとりあえず、この公園を一周だ。多分、この公園の一周は2kmはあると言われている。今まで自主的に走ったことはなかったので、そういった情報には疎かったのだ。

しかし、走りだしたものの、すぐに息が絶え絶えになった。ぜぇぜぇ言う恭介を走りすぎる、ランニングベテラン勢の人達。

でも、ここで歩いてしまったら負けだ。何としても、走り切りたい。

今、恭介の走る速度は歩いているに等しい。でも、ここで立ち止まり、歩きたくなかった。どんなにバテバテでも、この一周を最後まで走り抜きたい。

負けねぇ、負けねぇぞ・・・。

これをやり切ったからといって、何かが変わるわけじゃない。でも、自分への戒めとしてやり抜きたいんだ!!

諦めたら、そこで試合は終わる!!もう、俺は村井さんしか見えねぇ!!

今の時代、恋に命を賭けるなんて愚かかもしれない。でも、他に誰もやらないなら、俺がやってやる!!それがお前のやり方かと、詰め寄られるのであれば、これが俺のやり方だと主張してやる!!

俺はショウ君にはなれない。でも、俺は俺であることを証明してやるぞ!!

恭介は未知の自分に遭遇していた。

そして、バテバテの状態で家に帰ったが、充実感があった。

 

朝、恭介は学校に着くなり、机にもたれかかっている堀川の肩を叩く。堀川は気だるそうに顔を上げた。

「おい、その髪どうした?バッサリいったな。」

「気合だ。」

「フッ、そっちの方が似合ってるよ。短髪のほうが。まるでスポーツマンみてぇだ。」

恭介は堀川にサムズアップした。それに対して、堀川もサムズアップで返してきた。

恭介は自分の席に座り、集中力を高めるために、イヤホンを耳に掛けて、スマホから『南十字星』を再生させた。目を瞑ってメロディー、歌詞にただひたすら、心を傾けた。いつもはヴォーカルしか聴いていなかったが、今日はピアノやギター、ベースの音が耳に入ってくる。

"過去まで引き連れて

運命を引き寄せてみせよう"

何はどうあれ、未来は自分で切り開かねばならないのだ。

 

しかし、恭介にとってちょうどいいタイミングは訪れなかった。なるべく、村井さんが一人の時に、二人きりで話したいことを伝えたかったのだが、村井さんにはまるでブロッカーのように女子達が引っ付いているので、それは不可能だった。恭介は作戦を変更して昼休みに、堂々と村井さんに声を掛けることにした。

授業中、森崎越しから見える、村井さんの後ろ姿がとても遠く感じた。それでも、堀川とは男と男の約束をしたのだ。ここでたやすく引き下がるわけにはいかない。

昼休み、いつも通り、村井さんと小川と北見のグループと連立していた。恭介はこの日のために、いつものパンではなく、栄養ゼリーにしていた。時間短縮と共に必要なエネルギーを摂取するという、まさに一石二鳥である。恭介は栄養ゼリーを一気に飲み干すと、堀川はそれを見ていた。恭介は堀川に向かって静かにうなづく。堀川はいつものように眉間にシワが寄っていたが、今日はその表情に優しさを感じることができた。

恭介は立ち上がった。そして、ゆっくり、村井さんの方向に歩いた。教室内であるから、距離的には大したことはないのだが、体感的には国境を越えるような長さだった。ある意味では敵の真っ只中に自ら赴くのである。こんなやり方は『孫子』的ではないだろうが、そんなことを言っている暇はない。そうだ、今は大胆不敵な英雄を気取るしかないのだ。最初は英雄気取りでも、やり遂げてしまえば、それは本物の英雄である。しかも、これだけの小国が大国に挑もうとしているのだ。もう、失うものなどあろうものか!!

村井さんは気づいて、目線をこちらに向けていた。それに反応して小川達、北見達の視線がこちらに向けられていた。

恭介にはもう、一点の曇りなどなかった。

「村井さん・・・、あの時は俺が悪かった。ほんとに申し訳ない。だから・・・、そのことについてちょっと話をさせてもらえないか・・・。」

この光景を、堀川がどのような表情で見届けているのかはわからないし、目の前の小川達、北見達の表情もわからない。今はそちらに目を向けてる暇はなく、目の前の村井さんをただじっと見つめた。村井さんは下を向いた。

返事を待つ時間は、人間から生きてる実感をたやすく奪う。恭介は下を向いた村井さんのつむじに目線を合わせるしかなかった。

「わかった・・・。」

村井さんは了解してくれた。

恭介が「じゃあ・・・、」と言いかけた時、「おい、ちょっと待てよ。」と乾いた雷鳴のような声が聞こえた。恭介の認識能力は一瞬、停電しかけたが、すぐにその声の主がわかった。それは北見だった。

「今更、なんだよ。おめぇみてぇな陰キャは引っ込んでろ・・・。」

北見は立ち上がり、恭介は見下ろされた。北見はスポーツマンの面影を感じさせられながらも、冷酷な威圧感が漂っていた。恭介は何も言い返すことができなかった。

小川は「やめときなよ・・・。」と北見を弱気に制止していたが、止まる様子はない。

「村井だって、こいつに気遣ってるだけだろ?ハッキリ言ってやれよ・・・。」

「そんなことないよ・・・。」

「お前の出る幕はねぇから、さっさと引っ込んでろ。気持ちわりぃ。」

恭介は北見に存在を全否定された上で、片手で突き飛ばされた。そんな北見は何事もなかったかのように、椅子に座った。村井さんは心配そうにこちらを見つめていた。

恭介は目を逸らすように下を向き、目を閉じた。そうすると、心の底に眠っていた感情が沸き起こってきた。それと同時に呼吸が荒くなる。恭介は右手の拳を力強く握った。

こんな時、どうする・・・。おとなしく引き下がるのか・・・。いや、違う・・・。隼人だったら、敢然と立ち向かうはずだ。それにここで大人しく引き下がったら、堀川との約束はどうなる・・・。

恭介は下を向きながら、ゆっくり、元の位置に戻った。そして、心の中でありたっけの勇気をかき集めた。北見、覚悟しやがれ!!

陰キャだろうが、陽キャだろうが関係ねぇだろうが・・・。」

恭介の放った言葉は普段より低く、震えていた。

「はぁ?」

北見の突き放すような物言いが、恭介の怒りを爆発させた!!

「はぁ?じゃねぇよ!!おめぇに言ってんだ、このデクの棒野郎!!」

大声と物凄い剣幕、この場にいる誰もが知らない恭介の姿であった。

「俺が陰キャなら、お前は何なんだよ・・・。言ってみろよ!!」

恭介の問いかけに、北見はなんだと言わんばかりの表情をするだけだった。

「お前はただのバスケ崩れじゃねぇか!!こんなところでカッコつけてねぇで、さっさと体育館に戻れよ!!陰キャの俺がみっともねぇなら、お前だって十分みっともねぇんだよ!!」

「う、うるせぇよ!!」

胸ぐらを掴まれる恭介。すかさず、今井と尾西が北見を引き止める。恭介は北山の目を真っ直ぐ睨みつけた。

「おい、すぐに手かよ!!男だったら、堂々と意見を言えよ!!」

「・・・・・・。」

「意見がないなら、俺の番だ!!ちゃんと聞けよ!!」

もはや、恭介に周りの目など気するという発想は皆無だった。

「俺は、お前と比べたら何にもねぇよ・・・。でも・・・、お前みてぇに何かなきゃ、人のこと好きになっちゃいけねぇのか・・・。何もねぇヤツはただ黙って、じっとしてろってのか!?冗談じゃねぇぞ・・・。冗談じゃねぇって言ってんだよ!!」

恭介の叫びは北見の動きを完全に止めていた。

だが、次の言葉が出てこない。喉の奥がツーンと渇く。涙が溢れ出てくる。

なんだよ、ここで俺が泣いてどうするんだよ・・・。

恭介は右の太ももを思いっきり、拳で叩く。すると、村井さんも目を真っ赤にし、涙を流していた。

恭介は静かに大きく息を吸い込んだ。

「俺は・・・、村井さんが・・・、好きだ・・・。」

恭介はそう言ってガクッと膝から崩れ落ち、うつ伏せになって倒れた。

恭介は目を開けると、村井さんが泣きながら、抱きしめてきた。

「八重樫!!」

村井さんの恭介を呼ぶ声が、教室に鳴り響いていた。

 

それから、森崎は「君にも熱いところがあるんだね。見直したよ」と言ってきた。意外な人に讃えられると、格別に嬉しいものである。

そして、何日か経った朝、恭介は北見に呼び出された。最初は、何かあるのかと身構えたが、北見には以前のような威圧感が無くなっていたので、素直にそれに従うことにした。

北見は教室を出て、人気の無い階段に向かった。

「この前は、すまなかった。」

北見の突然の謝罪に、恭介は戸惑った。

「俺も・・・、酷いことを言ってしまった・・・。」

「何を言ってんだ。俺が八重樫に酷いことを言ったばかりか、手まで出したんだ。悪いのは全部俺だ。」

「・・・・・・」

「それに、あの言葉で目が覚めたんだ。」

「えっ?」

「俺は結局、上手くいかない苛立ちをぶつけていただけなんだ・・・。」

やっと北見が自分と同じ人間だと思えた。

「八重樫、これは言い訳でしかないが、聞いてくれ・・・。」

「どうしたんだ・・・?」

「実は・・・、俺は昔から村井のことを知っていたんだ。でも、村井は俺のことは知らないと思う。そういえば、村井にカレがいたのは知ってるか?」

「あぁ、なんとなくは・・・。」

「俺が中学の頃、村井のカレの中学はバスケがめちゃく強くて、俺たちも競ってはいたが、いつも負けていたんだ。そんなアイツを、村井はいつも応援席から見つめていた。すごく綺麗だった。なんか、試合に負けた以上に悔しかったぜ。」

そう話す北見から笑顔が溢れていた。自分の知らなかった北見はすごく爽やかだった。

「アイツが何処の高校に行くかは分からなかったが、バスケを続けるものだと思っていた。でも、風の噂で知ったんだ。アイツが火事で死んだことを・・・。それを知って、俺はバスケの情熱が冷めちまった。ライバルがいなきゃ、俺だって熱くはなれない。」

「そうだったのか・・・。」

「そして、この高校に入ったら、変わっちまった村井がいたんだ・・・。まぁ、俺は遠くから見てただけだから、村井は俺のことは知らない。だからかける言葉もなくて。それにバスケの情熱を失って、イライラばっかりしてた・・・。」

「北見・・・。」

「でも、ある日突然、村井は俺の知ってる村井に戻っていた。そして、俺は気づいたんだ。やっぱり俺は村井が好きだってことを・・・。」

その言葉は心を突き刺した。

「少し前にな、村井にバスケを再開したらと言われた。多分、アイツのことがあったから、そう言ったんだと思う。それから、八重樫にも体育館に戻れたと言われちまった・・・。」

「・・・・・・。」

「いや、そうじゃなくて、その通りなんだよ。だから、決心がついた。顧問に頭下げて、バスケ部に戻ろうと思う。」

北見の表情は活きいきとしていた。それから、ここから立ち上がろうとする決意も感じ取れた。

「俺がこんなことを言うのは筋違いだが、敢えて言わしてくれ。そもそも俺は八重樫みたいに村井を立ち直らせることはできなかったんだ。それは八重樫だから出来たんだ。だから、その・・・、八重樫と村井はきっとずっと上手くいくと思う。だから、頑張ってくれ!!」

北見は右手を差し出してきた。恭介も右手で答えた。スポーツマンシップとはこのことだろう。

北見は「じゃあ」と言って階段を降りていった。その後ろ姿に恭介は、自分の幸せにのぼせてはいけないことを胸に刻んだ。

「ありがとう、北見・・・。」

恭介はそう呟いた。

 

八重樫恭介の新たな青春が幕を開けた。そう、親友の堀川、そして彼女の亜理沙とのかけがえのない高校生活が待っているのだ。恭介のスマホの壁紙は、小川に撮ってもらったとびきり笑顔の亜理沙とのツーショットとなっていた。

そして今、恭介が愛読している本は孔子の『論語』だった。

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FIN

小説「やさぐれた青春不発弾!」その3(全4回)過去の亡霊

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過去の亡霊

今日の村井さんはいつもとは違っていた。それが恭介の心を痛めていた。

村井さんは朝から、机に突っ伏していた。しかも、村井さんはこちらに目を向けることは一度もなかった。それは明らかに村井さんが何かあることは明白である。

授業中、森崎の背中越しから見える村井さんが、とても心配になった。

恭介は迷った。村井さんに声をかけるべきかと・・・。いや、声をかけるとしてもなんと声をかけたらいい?たとえ、声をかけたとしても、それに応える余裕はあるのだろうか?いやいや、そもそも、今は近寄ってはいけないのだろうか・・・。

恭介はルーズリーフのノートの端に、シャープペンをひたすら上下左右に走らせた。シャープペンの線は次第に重複して、クロスハッチングになっていく。この真っ黒の状態から一体、どんな正解を描けばいいのだろう・・・。

時は無常に刻まれ、昼休みを迎えた。

やっと最近、味わえるようになったクリームパンが、また煩わしく思えた。だが一応、腹が減っては戦はできぬということで、無理に水筒のアイスティーで飲み干した。

村井さんの方へ目をやると、机に突っ伏して何も食べてる様子もなかった。

まぁ、無理もないだろう・・・。

恭介は決心して、立ち上がった。

恭介の手札は無に等しい。でも、何はともあれ、好きな人が辛そうにしていれば、黙って見ているわけにはいかない。それが恭介の出した答えだった。こんな時、手札がどうこう言っている暇はない!!

気がつくと、隣の堀川がこちらを見ていた。だが、それに構っている暇もない。

恭介は村井さんの席の前に立った。すると、村井さんは顔を上げて、薄目で見つめてきた。恭介は村井さんのこちらが側の机の端に両手を置き、ギリギリ聞き取れる声で「どうした・・・?」と聞いた。

村井さんは下を向いて何も答えなかった。

「もし、よければ今日も行こう・・・。もしかしたら、ほんのちょっとは楽になるかもしれない・・・。」

村井さんは無言だった。

恭介は村井さんの耳元で囁いた。

「ここだけな話・・・、今の村井さんをほっとけないんだよ・・・。」

だが、村井さんは何も答えなかった。

恭介は無理強いは良くないので、「そうか、分かった・・・。」と言って、その場を引き返そうした。その時だった。

村井さんは思い直したのか、「行く・・・。」と、とてもか細い声で答えた。いつものハキハキした声とは違い、明らかに精神的に辛そうなのはよく分かった。

村井さんと教室を出る際、北見がこちらを見ていた。今はそんなことより、村井さんの方が最優先である。

恭介は村井さんの歩幅に合わせて、ゆっくり歩いた。村井さんは下を向いてとぼとぼ歩いている。恭介は今、村井さんのことを守りたいと強く思った。

恭介は図書室に入るなり、いつもの席に座った。だが、村井さんはいつもの席の、自分と相向かいではなく、隣の席に座ってきた。

今、こんな状況ではあるけども、隣に村井さんがいるということになると、いつも違って村井さんの存在にダイレクトに感じられた。

下を向く村井さんの横顔が胸をいろんな意味でギュッとさせた。

恭介はとりあえず、村井さんに声を掛けた。

「どうした?調子でも悪いのか・・・?」

すると、村井さんは力のない声で答えた。

「そうじゃない・・・。」

何か思い詰めているようだ。

「無理に聞くつもりはない。でも、俺に話せるなら、話して欲しい。俺も、悩むタイプだから・・・。」

「うん・・・、知ってる・・・。」

「で、どうしたんだ?」

村井さんは答えなかった。

でも、村井さんの心境は察知することはできた。今は質問をするよりも、自分のことを話した方が安心してもらえるかもしれない。なので、恭介は自分の想いを"話せる範囲内"で村井さんにぶつけることにした。

「俺は今まで誰にも話さなかったけど・・・、いや、話す相手がいなかったんだけどさ、今まで、なんというか、生きてる意味がよく分かんなかった。今もそうだけど・・・。でも、今は、とりあえず生きてみることにした。何でだと思う?」

「なんで・・・?」

「深い意味はないけど・・・、村井さんがいるからだ。」

今の恭介には何の迷いはなかった。

「えっ、どういうこと・・・?」

「どういうことかは自分でも良く分からない。でも、これだけは言える。村井さんと話すようになってから、そう思えるようになったんだ。まぁ、人にはどんな関係であろうが、誰かが必要ってことさ。どんな関係でもね・・・。とにかく、一人で抱え込むってのはめちゃくちゃしんどい。俺だってそうだから分かるんだ。だから、せめて辛い時は誰か頼っても良くないかな・・・?なんか、その・・・さ、村井さんが辛いそうだと俺も辛いんだ・・・。」

言葉って考えるよりも、勢いの方が出るものだ。

「八重樫・・・。あんたは何者なの・・・。」

そう言った村井さんの目から、少しばかり涙が流れていた。

下を向く村井さんをただ黙って見つめる恭介。今は村井さんの言葉を待とう。これまで村井さんが一人で何かを抱えるという重荷を背負って生きていたことを思うと、恭介は胸がいたたまれなくなった。そんな村井さんの姿を見ていると、自分までも泣きそうになった。

村井さんは目元を右手の人差し指で拭っていた。

「わかった・・・。話す。今日の放課後でも、聞いてくれるの・・・?」

「いや、いつでも空いてるから大丈夫。」

「ありがとう・・・。」

「村井さんの家の方角は大体どの辺?」

村井さんは学校から北側を指さした。

な、なるほど・・・。

「いい公園がある。そこで話そう。」

「分かった・・・。」

 

放課後、村井さんと訪れたのは"天馬公園"だった。

入り口の近くに恭介は自転車を停める。村井さんもそれに続いて自転車を停めた。恭介はいつものベンチを「あそこに・・・」と指差す。それに対し、村井さんは軽く頷いた。

恭介と村井さんはベンチに向かって芝の上を歩く。恭介は村井さんの方へ顔を向けると、やはり俯いていた。

恭介はベンチに座り、それに続いて村井さんも隣に座った。

村井さんは下を見ながら、胸の前で両手を組んでいた。

「・・・・・・。」

無言が続く。車のエンジンがいつもより、よく聞こえる。

重々しい緊張感の真っ只中、恭介は先陣を切らねばならない。恭介は今まで自分に課せられたことのない役目に、胸が締めつけられた。

だがついに、恭介は意を決した。

「どうした?」

村井さんは答えるように、ポケットからスマホを取り出す。村井さんは慣れた手つきで、パスワードを素早く入力し、操作をはじめた。

恭介はその様子を見守る。

村井さんは操作を終えて黙ったまま、スマホの画面をこちらに向けた。

そこに映し出されていたのは、笑顔の村井さんと、同年代と思われる男子のツーショットだった。

「か、彼氏・・・?」

村井さんはスマホを自分に向けた。

「彼氏というか、なんというか・・・。」

「好きな人・・・?」

「違うの・・・。」

どういうことなのだろうか?

「元カレというか、その・・・、し、死んじゃったのよ。」

「し、死んだ・・・?」

「火事で・・・。」

恭介は突如、突きつけられた事実にただただ圧倒されるだけだった。

「いつ、亡くなった・・・?」

「ちょうど一年前くらい・・・。中3の、このくらい時期だった・・・。彼、ショウ君っていうだけど、私と同級生で、バスケ部だったの・・・。」

村井さんの声が徐々に力無くなっていく。両手を膝の上に置き、下を向いて涙を流し始めた。

「あんなに・・・、あんなに頑張ってた・・・。一生懸命だった・・・。バスケにいつも夢中で・・・、いつも、バスケのことばかり話してた・・・。私は、そんなショウ君が好きだった!!ずっと側にいたかった・・・。でも、未だに信じられない。ショウ君がいなくなるなんて・・・!!だから、電話番号だって消せない。かかってこなくたって!!それに、私だけのうのうと生きて、幸せになっていいのかなって思うの・・・。それに私がショウ君のこと忘れたら、完全にショウ君の存在が無くなってしまう気がして・・・。」

村井さんの声を震わせ、泣いていた。恭介はとても辛かった。今の村井さんにどんな言葉をかけても、その悲しみを消すことはできない。だって大切な人を失ったんだ・・・。

恭介は村井さんの膝に置かれた手を握った。悲しみを背負う村井さんにしてやれることはこれしかなかった。

恭介も何故か涙が溢れた。

「八重樫・・・?」

「ご、ごめん・・・。俺まで・・・。」

「ううん、いいの・・・。それで・・・、ちょっと前にショウ君が死んだ日に近づいてきたから・・・、辛くなってひとりになりたくて、図書室に行ったの・・・。その時、八重樫がいたの・・・。なんか、よくわからないけど、急に話しかけちゃった・・・。でも、今では八重樫にこんな話まで、するとは思わなかった・・・。だって誰にも打ち明けたことはなかったから・・・。」

ショウ君との笑顔のツーショットと、たった今、打ち明けてくれた話から、村井さんがどんな人か分かった。

恭介は渇いた喉の奥から必死に声を絞り出した。

「なんというか・・・、それから立ち直るのは簡単じゃない・・・。いや、むしろ、一生ものかもしれない。でも、本当の村井さんは明るい人のはずだ。でも、そのことがあって、村井さんは心を閉ざすようになったんだろう・・・。でも、これだけは言わせてほしい。」

村井さんは涙を流しながら、頷いた。恭介は村井さんの顔を見つめて言った。

「俺は・・・、俺は、村井さんには幸せになって欲しい!本来の明るい村井さんに戻って、幸せになって欲しいんだよ!!」

恭介は溢れ出る想いを吐き出した。

「もったいないよ・・・。誰よりも笑顔が素敵で、ほんとは明るくて・・・。でも、一人で抱え込んでさ・・・、なんと言えばいいか、わかんないけど・・・、村井さんは、村井さんの人生を生きていいんだよ!!過去は忘れられないだろうけど・・・、村井さんには幸せになって欲しい!!」

「八重樫・・・。」

村井さんは恭介の胸に飛び込んできた。今までひとりで背負って、相当辛かったに違いない。そりゃ、みんなの前で明るく振る舞ったりは出来ないだろう。

恭介はただのひとりの人間として抱きしめた。

 

それから村井さんは家に帰り、恭介はひとりこの場に残った。

日が沈む中、恭介はベンチに座りながら、少し遠くにある外灯を見つめた。

さっきまで隣には村井さんが座っていた。だが、それを忘れくらいの孤独が押し寄せてきた。

そう、村井さんの過去を知り、恭介は自分の想いを村井さんに伝えてはいけない気がしてきた。

好きだから、守りたい。でも、好きな気持ちは伝えれない・・・。なぜなら・・・。

大切な人が居なくなる悲しみは、自分も知っているからだ・・・。

村井さんに今、必要なのは過去との向き合い方、心の整理なのである。なのに自分の想いを伝えるなんて、逆に村井さんの心をさらに傷つけることになるのかもしれない。

確かに言った。村井さんには自分の人生を生きていいと・・・。でも、自分は村井さんに相応しい人間じゃない。あの彼のようにはなれない・・・。

村井さんは美人で、本来の明るさを取り戻せば、良いタイミングで相応しい人が現れるだろう。

恭介はぐちゃぐちゃといろいろんな感情が合わさって、さらには自分の立ち位置が分からなくなった。

そんな時、恋愛マニュアルの権謀術数のことがフラッシュバックする。

出来るわけねぇだろう、そんなこと!!

恭介は自分でも制御不能な感情に苛まれて、今に引き裂かれそうだった。

恭介が村井さんに見た、ほんの僅かな光は風前の灯だった。所詮、恋なんて積み木にすぎない。こっちが勝手に組み立てて、勝手に崩れ去る、儚いものだ。そんな不安定かつ、不確定なことを何度も繰り返して、人は大人になるというのなら、いっそこのままでいい。

しかし、そんな恭介の前には夜がすぐそこまで近づいているのだった。

恭介は暗闇の孤独の中、家に帰った。

 

だが次の日、そんな恭介とは真逆に、村井さんの雰囲気が変わっていた。そう、本来の明るい村井さんに戻っていたのだ。勿論、見た目は全く変わってはいない。しかし、今まで纏っていた陰がなくなり、太陽のような存在となっていた。そう、あの彼とのツーショットの時の村井さんのように・・・。

村井さんはこちらに気がつくなり、明るく「おはよう!」と挨拶してきた。

恭介には今の村井さんが、あまりにも眩しすぎて、自分の存在がかき消されてしまう気がした。

いや、俺なんていっそのことかき消えた方がいいんだ・・・。

周りは明るくなった村井さんの様子見て、話しかけるようになっていた。

思った通りだ。恭介は自分と村井さんは決して交わらない隔たりがある気がした。そう、別の星の住人だったんだ。

昼休みになってクリームパンを食べようとしたが、口が全力でそれを拒否した。ここは取り敢えず、水筒のアイスティーで空腹を誤魔化すことにした。

村井さんはすでに小川のグループに誘われて一緒に食べていた。それに初めてなのに、すごく馴染んでいるように見えた。

「おい、食わねぇのか?」

突然、堀川に声をかけられた。

「なんか、変だぞ?」

いつも眉間にシワを寄せている姿からは想像できない堀川の言葉に、違う意味で圧倒された。

「い、いつも変だから、大丈夫だ・・・。」

堀川はリュックからうまい棒をこちらに投げて渡した。

「せめてそれくらい食えや。もたんぞ。」

「す、すまん・・。」

恭介はうまい棒の包装を開けて、シャキッと齧った。堀川の優しさにちょっと泣きそうになった。

すると、食事を終えた村井さんは笑顔でこっちに向かってきた。

「ご飯食べ終わった?」

「あ、ああ・・・、食べ終わったよ・・・。」

向こうからアクションを起こしてくるなんて、本来ならば、こんなに喜ばしいことはない。

日差しによって照らされた村井さんの髪は茶髪のポニーテールにも見える。しかも、色白の肌も相まって、お父さんが昔聞いていた美人の女性アーティストようにも思えた。今の村井さんの眩しさによって、恭介は全てのことから目を背けたくなった。

「これから、ちょっと来て欲しいところがあるんだけど・・・。」

「わ、分かった。」

恭介は内心、動揺しながらも村井さんに連れられて教室を出た。そんな村井さんは行き先を告げずに階段に降りた。恭介はその後を黙ってついて行った。

玄関に着くと、村井さんは上履きから靴に履き替えた。

「ちょっと、外の日陰のベンチに行こうよ。」

恭介は村井さんに続いて靴に履き替えた。

村井さんはベンチに座った。恭介は座らずに、その場に立っていた。

「どうしたの?座らないの?」

「いや、なんとなく、今日は立ってる方が落ち着くんだよ。」

「そうなの。ならいいけど。」

恭介はベンチに座る村井さんを見下ろしていた。

「いつも、図書室で話してるから、今日くらいたまには外で話したかったの。まぁ、外の方が気分もいいし。」

「確かに・・・。」

「八重樫、ありがとう。八重樫のおかげで、ワタシ、吹っ切れた。確かにショウ君との思い出も大切だけど、何より、今を大切にしなきゃって思ったの。自分の人生、思いっきり生きなきゃって!」

そう言った村井さんの横顔がとても凛々しく見えた。

「よ、良かったじゃないか・・・。」

賛同しているようでまったくしてないという、自分史上最悪な返事をしてしまった。

「どうしたの?」

心配そうに覗き込む村井さんの顔が、恭介の影を際立たせる。

「何かあったの?だったらワタシに話せばいいじゃない?」

「・・・・・・。」

「あぁ、ここじゃ嫌だよね?帰りにでも、二人でまた、あの公園に行く?」

言うわけにはいかない・・・、言うわけには・・・。

「・・・嫌だ。」

「えっ・・・。」

村井さんの悲しい声が、罪悪感の輪郭を縁取る。

「は、話したくないよ・・・。」

「ちょっと、どういうこと・・・?」

「いいから、話したくないんだ!」

思わず、感情的になってしまった。しかも怒鳴って相手を傷つけてるのに、自分の心が痛かった。

「人にあんな偉そうなこと言っといて、自分はまだ殻に篭り続ける気!?」

「俺の気持ちなんか、君に分かるかよ!!」

「いきなり、そんなこと言われて意味わかんないよ!!ねぇ、一体どうしたの!?」

「・・・・・・。」

恭介は村井さんの顔を一切、見ずにその場を後にした。

恭介は靴を脱いで、上履きに履き替えた。玄関には村井さんの上履きが残されていた。

喪失感の中、恭介は逃げ隠れるように校舎をひたすら彷徨った。とにかく、今は誰にも自分の姿を見られたくはない。恭介は校舎の外れの3階の階段にその身を隠した。ここなら追っ手は来ない。

白く硬いコンクリートの階段の壁に寄りかかりながら、自分のこれからの皆振る舞いを考えた。今までは誰とも話さない高校生活が憂鬱だったが、これからはそれに加えて悪名を背負って生きていくことになる。そもそも、こんな自分が村井さんという存在に想いを抱いたこと、それ自体が罪だったのかもしれない。

静寂と、踊り場に反射する窓の光。この無機質な神聖さが、まるで裁きを下しているようだった。

確かに衝動的ではあったが、でも他にどうすれば・・・。

言えるわけがないのである。自分のことなんて・・・。

自分の弱い心が、必死に自分を守った結果、相手を傷つけるという最悪な結果になってしまった。でも、この方が都合が良かった。村井さんに変に気にかけられ続けるよりも、嫌われてしまった方が良かったのだ。

恭介はスマホで時間を確認する。昼休みが終わるまでまだ時間はある。いっそのこと、このまま家に逃亡したかったが、そんなわけにはいかず、昼休みが終わる頃には、教室に出頭しなければならない。そう、恭介に与えられた時間は長くはないのだ。

恭介は時計に目をやり続けた。まるで死刑開始を目前とした囚人のように・・・。

 

恭介は死刑台に登るつもりで、長い廊下を歩いた。生きた心地がしないのではない、すでに死んでいるのである。そして自分のクラスの表札1-Cが見える。

いよいよか・・・。

恭介は覚悟を決めてドアを開ける。

案の定、小川がこちらに睨んでいる。彼女はいわば、クラスの"警察官兼裁判官"であり、こちらが犯した罪を公衆の面前で炙り出し、断罪しようとしているのだ

そんな村井さんは机に突っ伏していた。

恭介はそれを見て見ぬフリをした。どうせ、それでは済まないのだろうが・・・。

「アンタ、酷いわね。村井さんに一体、何したの!?」

それを聞いた村井さんは「やめて!!」と制止していたが、それで止むはずもない。

「アンタ、いつも変だけどやっぱり、変なヤツだったんだ!!」

責めるがいい。気の済むまで・・・。

なんだか、不祥事を起こした芸能人の気持ちが分かる気がした。

まぁ、俺を悪者にすれば全て解決するのだから・・・。

「やめろよ!!」

それは堀川の声だった。

「事情も知らずにコイツだけを責めるのはフェアじゃねぇぞ!それにこれは二人の問題であって、お前らの問題じゃないだろう?お前らが変に騒ぎ立てるのことで、二人をさらに傷つけることになるんだ。そっとしといてやれよ!」

堀川が庇ってくれたことが逆に辛かった。

そして、北見は黙ってこっちを見ていた。何故か、嫌な予感がした。

 

放課後、恭介は真っ直ぐ家に帰った。天馬公園に行く余裕などなかった。

恭介は部屋のベットに体育座りをした。

何にも考えたくなくて、部屋の壁をただじっと見つめているだけだった。

どれくらい経ったかは分からないが、少しばかり、落ち着きを取り戻したので、恭介は適当に『やさぐれ刑事』のDVDを再生させた。今は取り敢えず、『やさぐれ刑事』をBGM代わりには再生させたかったのだ。だが、あっという間に1話が終わってしまった。すると、EDの『南十字星』が流れてくる。

恭介は俯くしかなかった。

そして、次のエピソードが始まった。だが、恭介は気づいた。

今から始まるエピソードは、隼人に因縁のある犯人が登場し、隼人をつけ狙うである。以前、隼人はその犯人を過度に追い込んでしまったことがあり、それで恨まれていたのだ。その贖罪から、隼人は周りを巻き込みたくないと、協力を拒み、独断行動したりして、肝心なことをまったく話さなくなる。そう、普段、威勢のいい隼人も自分のことになると、一人で抱え込むのだ。そんな隼人は、いつもは隼人に言われる側の、仲間の若手やベテラン刑事に、「どうして一人で抱え込むんだ!!」と集中砲火を喰らっていた。それを言われて隼人はただ黙っているだけだった。

恭介は咄嗟にプレイヤーのリモコンのスキップボタンを連打して、次のエピソードに飛ばした。

 

あれから何日か経ち、村井さんと会話することはなかった。そして嫌な予感は的中した。昼休み、村井さんは小川を筆頭とする女子グループに混じって、北見達のグループと会話していた。村井さんの表情は自分の知っているものとは違って活きいきしていた。

そういえば、北見は元バスケ部で、どことなく、あの彼と似てる気がした。結局、ああ言うヤツの方がお似合いなのだろう・・・。

恭介は楽しそうに会話する村井さんの横顔をそっと見る。そして背を向け、教室を出た。

今日のことはよく覚えていない。

自分がそうなるべきだと思ったことが起きたはずなのに、やはり心がついてこなかった。無理矢理、納得させようはしたが無駄だった。今日はただそれだけに囚われていた。

次の日、恭介は昼休み、『韓非子』を持って図書室に来ていた。

恭介はいつもの席に座るなり、誰もいない相向かい席と隣の席に目もくれなかった。

恭介は『韓非子』をペラペラとめくったが、文字を目で追ってはいなかった。

韓非子』をテーブルに置き、窓から見える国道を眺めた。そして、国道を走る車を目で追った。絶え間ない車の流れ、これが絶えず繰り返される。そんな恭介の顔に日差しが強く照りつけていた。

放課後、恭介は吸い寄せられるかのようにイデアに向かった。

イデアの一階の通路を歩いていると、化粧をした女子高生二人組とすれ違う。今日は特にその女子高生達が遥か遠くの存在に思えた。

恭介は歩きながら考えた。いや、歩くというよりも、ただ単に足を動かしているという感覚で、完全に思考に支配されていた。

もしかすると、自分は愛されるということに距離を置かれる星の元に生まれ付いたのだろうか?そうなると、"別の星の住人"という感覚も納得がいく。

この地球上には愛されたい人間が、必死に愛されたいと叫んでいる。その人間は愛されたいから叫んでいるのに、誰かに愛されている人間からは、"考えすぎ"という単純かつ冷酷な言葉で一蹴されている。この世は最高の皮肉ばかりである。

すれ違う人達はきっと誰かに愛されて、誰かを愛している人達なのだろう。

俯いた恭介の出した結論は、自分が世界から孤立していることを再確認させたのだった。

そんな恭介はエスカレーターで2階の本屋に向かった。

無意識にたどり着いたのは浜辺文庫の棚だった。たまたま目についた本のタイトルはゲーテの「若きウェルテルの悩み」であった。

そういえばあの時、向かいの本棚ではカップルが仲睦まじく、会話していたのを思い出した。今になって思うと、彼等は実にお似合いのカップルだった。どこか、お互いが同じ方向を向いているような雰囲気がした。そんな二人はどんな出会いだったのだろうか。いや、どんな接点を手繰り寄せて、付き合うに至ったのだろうか。結局は、自分のように思い悩んだことはないのかもしれない。そもそも思い悩んでいる時点で、結果は明白なのだろう。そんなことよりも、お互いがまるでパズルのピースのようにカチッとハマることの方が良いのである。それの方が自然であり、説得力があるのだ。

恭介は思い悩んだ自分すら、否定したくなった。

 

「あら、おかえり。」

居間にはお義母さんがいた。

「どうしたの?」

恭介は何も言えずに目を逸らした。

「ちょっと前まで楽しそうだったのに、最近はまた、暗い顔して・・・。」

恭介は不意に涙が出そうになった。

「なんかあるなら、話してごらん。」

「・・・嫌だ。」

恭介はハッとした。

「恭介、あなたにこんなことを言ってしまうのはアレだけど、私は恭介の"本当のおかあさん"じゃなくても、愛してるの。辛い時は、少しは頼って欲しいな・・・。」

お義母さんが初めて見せた悲しそうな言葉と表情に、恭介は罪悪感が加速した。

「ち、違う・・・。俺はそんなつもりじゃ・・・。」

必死に弁明しても真実を語らない限り、意味を成さない。

今恭介とお義母さんの間にある静寂は、今ここで過去を振り返らせようと待ち構えているのである。

お義母さんはただじっと、こちらを見つめていた。恭介はついに決意をした。

 

恭介が小学4年生の頃、お父さんと本当のお母さんが離婚した。多分、性格的に合わなかったのだろう。ケンカはまったく無かったが、会話の無い冷め切っていた関係だった。でも、当時の恭介にとっては当たり前の日常だったので、何の疑問も抱かなかった。だが離婚という現実を突きつけられてやっと、その関係を理解した。

お父さんに育てられることになった恭介は、いつか、お母さんと会えるものと思っていた。

だが、お母さんとの偶然の再開は残酷だった。

離婚して半年が経った時、恭介はお父さんの買い物に付き合ってイデアに行った。恭介はトイレに行きたくなり、お父さんと別れて一人でトイレに向かった。その時だった。恭介のお母さんは知らない男の人と腕を組んで歩いていた。それに恭介はお母さんと目が合った。しかし、お母さんは他人のフリをしてその場から、男の人と立ち去って行った。

恭介は悟った。もう二度とお母さんと会えないことを。しかも、たまにどこかに連れて行ってくれたお母さんの親戚とも、もう会えないのである。

恭介はトイレの個室に入り、袖で涙を拭いた。この姿を誰にも見られたくはなかった。

それから、この出来事はお父さんに告げず、遅くなった理由もちょっとお腹が痛かったから、遅くなったと誤魔化した。

恭介が自分のことを話さなくなったのは、それからだった。

だが、その記憶と感情は鮮明に焼き付いている。まるで傷だらけのDVDが再生を止めるように、あの頃からずっと恭介の時が止まったままだった。

それから、中1の頃にお義母さんが家にやってきた。

 

「辛かったね・・・。」

恭介はお義母さんに強く抱きしめられた。お義母さんの目は涙ぐんでいた。

「本当のお母さんとずっと一緒に居たかったよね・・・。」

口を大きく開けて、呼吸が荒くなる。今まで堰き止めていたものが溢れ出てて、それが一雫となって床を濡らす。

「お、おかあさん・・・、今までごめん・・・。」

恭介はおかあさんを見つめた。

より強く抱きしめられる恭介。忘れたはずの温もりが蘇る。

自分が悲しくて泣いてるのか、安心して涙が出たのかは分からなかった。でも、人に話すのが怖かった。人にこのことを言ってしまったら、本当のお母さんを悪者にする気がしたから・・・。

恭介の今まで溜めていた苦しみをおかあさんが洗い流してくれた。

 

恭介は自分の部屋に戻って、ベッドに仰向けに横たわった。そして何気なく、動画投稿サイトのアプリを開いた。すると、真っ先におすすめと表示されたのが森奈イヴの『コール・ミー!』だった。

森奈イヴ・・・。

スマホの端末は検索履歴をちゃんと覚えている。自分がこれまで調べてきたものをきちんと記憶し、その関連したものなどをおすすめとして表示してくる。勿論、全てが正確なわけではないが。

そう簡単に今までのことを綺麗さっぱり、忘れるなんてできやしない。

恭介は適当に画面をスクロールしたものの、やはりさっきの森奈イヴのことが頭から離れず、アプリを閉じてスマホをベッドに置いた。 

 

つづく